国税庁が公表した令和6事務年度の法人税・消費税の実地調査結果によると、調査件数が前年比▲7.4%の5.4万件と減少した一方、追徴税額の総額は3,407億円に上り、直近10年で最高額となりました。
1件あたりの追徴税額は634万円で、前年から15.4%増加しており、調査精度の向上が数字に表れています。
この背景には、AIによる不正パターンの判定やリスク分析の導入があり、従来の経験とデータサイエンスの融合により、高リスク法人の選定精度が格段に上がっています。
不正事例としては、外注費や人件費の仮装計上、売上の除外などが多数報告されています。
特に、売上を代表者の個人口座に振り込ませる手口や、架空の請求書による経費水増しが散見されます。
業種別にみると、不正発見割合が最も高かったのはバー・クラブ(62.3%)で、1件あたりの不正所得金額も4,466万円と突出しています。
他にも、外国料理や美容業、建設関連業種なども高リスク業種として位置づけられています。
調査の重点は「消費税還付申告法人」「海外取引法人」「無申告法人」の3点に集中しています。
不正な消費税還付を狙った偽装輸出や、海外税務当局との情報交換を活用した売上除外の発見、SNSや取引銀行情報を端緒とした無申告の摘発など、手法は多様化・高度化しています。
特に海外取引に関しては、移転価格や外国子会社の取引が精査されており、形式的な書類管理だけでは対応が困難になりつつあります。
中小企業の経営者としては、調査対象の抽出基準がAI化・高度化している現状を踏まえ、まず自社の経理処理や契約関係を第三者の目線で点検することが不可欠です。
特に、役員報酬や外注費、人件費などの支出に関する証憑書類の保存、取引の実在性に関する記録、海外関連会社との契約書や送金履歴などの整備が求められます。
無申告状態がある場合は即座に専門家へ相談し、自主的な修正申告を行うことが、将来的な税務リスクを大幅に軽減する最善策となるでしょう。
あわせて、日頃から税務調査を想定した内部統制の構築を進めることも、企業防衛として極めて有効です。